公開日:2025年1月27日最終更新日:2025年1月28日
目次
シャドーイングとは、リスニング音源のスピーカーが話す英語を「聴きながらすぐその後にその聴き取った内容を声に出す」練習法です。
リスニング力強化に効果があり、通訳者養成など幅広く英語力強化トレーニングとして取り入れられておりTOEICリスニング力強化においても主流のトレーニング方法です。
リスニングのプロセスは大きく分けると音をキャッチする「音声知覚」と聴き取った音から意味を抽出していく「意味理解」の二段階に分けられ、シャドーイングは特に「音声知覚の自動化」を促進するとされています。
ただやり方次第でその効果は大きく左右されてしまうので、効果的なシャドーイングを行ってリスニング力を伸ばしていきたい方はこちらの記事をぜひ参考にしてください。
これからシャドーイングに取り組もうとされる方、もしくは自己流でつまづいてしまった方は、以下のポイントをおさえてその次のセクション記載の手順に沿って練習を行いましょう。
✔ ポイント①聞きながら同時進行でついていくように行う(一文終わってからリピートではない)
✔ ポイント②スピーカーの発音を極力正しく真似る(英語の個別音・音の連結・弱化・リズム・イントネーション等含め)
✔ ポイント③長文をシャドーイングする際には一文ずつ練習を行ったうえで長文全体のシャドーイングに取り組む
✔ ポイント④次のセクション記載のようにシャドーイングの下準備を含めた段階的なシャドーイング練習を行い、つまづいた際には一つ前の段階(もしくはそのつまづきの原因を改善する段階)に戻ってそこの完成度を上げたうえで再挑戦する
✔ ポイント⑤段階的な練習を行っても音源のスピードが速過ぎてなかなかついていけないと感じた際にはプレーヤーで音源のスピードを少し遅く調整して取り組む(そして徐々に速くしていく)
シャドーイングは正しく行うことでリスニング力向上に効果を発揮しますが、特に初心者~中級者レベルの学習者がむやみに自己流で行うとうまくできずに効果が出なかったり、そのせいで英語学習のモチベーションが下がってしまったりする可能性もあるので、やり方に注意が必要です。
シャドーイングは以下に記載するような段階的な手順を踏んでステップアップさせていくイメージで行うようにしましょう。
状況に合わせてディクテーションなどの他のリスニングトレーニングを合わせて使って学習することもお勧めですが、ここではシャドーイングのやり方の習得にフォーカスするために、直接的にシャドーイングに関連するプロセスに絞って紹介していきます。
以降、次の例文音声を使ってトレーニングの流れを追っていきますのでまずは聴いてみてください。
声を出して行う練習に入る前の下準備の第一段階として、まずは該当の文のスクリプトを確認し、分からない箇所を潰して明確に理解できている状態にする必要があります。
この文のスクリプトを見てみましょう。
I noticed that there were a few errors on the invoice.
この段階では、特に以下に挙げる項目は必ずクリアにしておきましょう。
例えば、以下のような感じです。
・invoiceの発音は/ˈɪnˌvɔɪs/で意味は「(明細付きの)請求書」
・that節(thatから最後まで)は動詞noticedの目的語
精読時に限らず、普段から気になった単語はすぐに調べる癖をつけておくことは英語力向上の大事なポイントの一つなのでぜひ実践してください。
次の段階では「時間をかけてしっかり確認していくことで文意が理解できる」という状態から「英語の語順のまま頭から一直線に素早く文意を理解できる」という状態へレベルアップさせていきます。
リスニングでは音をキャッチしながら順次スピーディに理解していく必要があり、英語の語順のまま理解ができないと話し手のスピードについて理解していくことは難しいです。
そこで、英語の語順のまま文意を理解するトレーニングとして「スラッシュリーディング」を行います。スラッシュリーディングは日本語と語順が異なる部分にスラッシュを入れて、そのかたまりベースで英語の語順のまま意味理解を行っていくトレーニング手法で、リーディング・リスニングの「意味理解」のスピードアップに効果があります。
スラッシュリーディングのやり方詳細に関してはこちらの記事を参照ください。
TOEICリーディングスピード不足・Part 7色塗りを卒業するための「スラッシュリーディング徹底解説+演習」
今回の例文にスラッシュを入れたものを頭から返り読みせずに理解する練習をしてみましょう(+の部分を押すとスラッシュ訳が出ます)。
I noticed / that there were / a few errors / on the invoice. //
日本人英語学習者は英文リーディング時にどうしても日本語語順の完璧な日本語訳に訳読して理解しようとして、以下のような非常に時間のかかる「返り読み」を行う傾向にあります。
×返り読み(I)私は (on the invoice)請求書に (a few errors)いくつかの誤りが (that there were)あることに (noticed)気付きました
リーディング時「返り読み」は致命的なリーディングスピード低下の原因となり、リスニング時は「返り聴き」ができないため聴きとれた単語から文意を推測するしかなく曖昧な理解に陥りがちです。
スラッシュリーディングを反復して行い、該当の文を頭から英語の語順のまま素早く理解できる状態を作り上げておくことはシャドーイングトレーニングの効果を出すための重要なポイントです。
このプロセスをしっかり行わないと、この後の音声知覚に関わるプロセスを進めて音が聴きとれるようになっても意味理解ができない・追い付かないという問題が出てくる可能性があります。
ある程度素早く頭から意味がとれるようになってきたら、音源のスピードについていきながらスラッシュリーディングを行う練習にも取り組みましょう。
次に、音源を聴きながら音声的な特徴をスクリプトに記入しましょう。
リンキング等の音声変化やリダクション、強勢位置やイントネーションなどに注目してスクリプトにご自身が分かりやすいように印付けをしていくといいです。
この後の段階で使用するので、文字を書くよりかは瞬時に見て分かりやすい記号・印の方がいいですね。
以下のメモが私が印付けしたものです。
・noticed /ˈnoʊtəst/の一つ目の/t/は前後が母音に囲まれているのでフラッピング
・noticed that /ˈnoʊtəst ðət/はnoticedの末尾の/st/部分で子音が連続していて次の語の頭も子音なので/t/が脱落
・thatはリダクションで弱形の/ðət/で発音し、次の単語が子音から始まるので語尾の/t/は閉鎖のみでリンキング
・were a /wər ə/とerrors on /ˈerərz ɔn/の二か所は子音+母音のリンキング
・赤い印は強勢位置
・下向き矢印は下降調のイントネーション
英語の音声に関して上に挙げたポイントに関連する重要な事項は以下の記事にまとめていますので参考にして下さい。
音声変化TOEICリスニング力UPのカギとなる音声変化ルールまとめ(リンキング・同化・脱落)
リダクションTOEICリスニングが苦手な方必見 | 音の弱化 ― Reduction(リダクション)とは?
強勢リズムスムーズな音読・シャドーイングに欠かせない英語の強勢拍リズム(品詞別の強勢有無一覧表付き)
イントネーションTOEICリスニングパートで発言の理解を促進するイントネーションの基礎
音声を聴いて、一文聴き終わった後に音声的な特徴を記入したスクリプトを見ながら音声を真似して音読します。
この次の段階のオーバーラッピングやその次のシャドーイングと違って自分のペースで発音できるので、この段階では多少ゆっくりでもいいので正確でスムーズな発音に整えることに集中して反復練習しましょう。
オーバーラッピングはスクリプトを見ながら、音声と同時に発音する練習です。正確でスムーズな発音を音声と同じスピードで出来る状態へもっていくことが目的です。
音声のスピードについて同時に発音することが難しい場合は一つ前のプロセスに戻って発音を整えることや、冒頭のポイントに書いたようにプレーヤーで音声スピードを少し下げてついていけるレベルから少しずつノーマルスピードへ上げていく練習を行いましょう。
こちらのブログ記事掲載の音声はスピード調整ができないのですが、ご自身でシャドーイングにmp3等の音声データを使用される際はAudacityなどの音声プレーヤーで速度調整が可能です。TOEIC公式問題集の音源などの教材はabceedのアプリを使って音声再生・速度調整が可能です。
シャドーイングの中でもこの第一段階であるプロソディシャドーイングでは音声を正確にコピーすることに集中してシャドーイングを行います。
スクリプトは見ずに、音声を聴きながらその後にすぐついて発音していきましょう。以下のようなイメージです。
音声:I noticed that there were a few mistakes on the invoice.発音: I noticed that there were a few mistakes on the invoice.
音声の音量が小さいと自分の声で音声が聴こえづらくなってしまうので、そうならないくらいの大きな音量で再生しましょう。
では試しに音声を再生してシャドーイングを行ってみましょう(上のスクリプトは見ずに)。
ここでもスピードについていくのが難しいと感じた場合はこれより前のプロセスに戻って復習することや、音声の再生スピードを少し落としてついていけるレベルから徐々に上げていく練習を行ってください。
反復練習を行って、聴きながらそれについて正確に発音することがある程度余裕をもってできるようになってたら次の段階に移ります。
このシャドーイング第二段階では、フォーカスを音から意味へ移していきます。
音声について正確な音で発音しながら、同時にその意味内容を理解していくことに集中しましょう。
一つ前のプロソディーシャドーイングでだいぶ余裕をもって音声の速さについていきながら発音できていたのに、いざ意味の方にフォーカスしようと思ってもすんなり意味が入ってこないという場合は、英文を頭から英語の語順のままスピーディに理解スキルがしっかり身に付いていないことが考えられます。
スラッシュリーディングのプロセスに戻ってそこの反復練習を再度行ったうえでコンテンツシャドーイングに再チャレンジしてみましょう。また、日ごろからスラッシュリーディングの練習を行って英語の語順で理解していくスキルのレベルアップを図っておくことも大事です。
音声を聴きながらそのスピードについて正確に発音し、同時に意味が素早くイメージできるようになったらその文はOKとして次の文を同じように行っていきましょう。
このように段階を踏んでシャドーイングトレーニングを行うことは特に最初のうちは手間がだいぶかかりますが、上達してくると一つの文にかける工数・時間ともに少なくて済むようになってきます。
正しい手順で反復練習していくことで、初めて聴く音声でも(既知の語彙を使った文であれば)シャドーイングできるようなレベルへ到達することも可能です。
まずはこちらの記事を参考に、焦らず丁寧に段階的なシャドーイングの練習にじっくり取り組んでみてください。
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