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音の弱化(リダクション)とは?

TOEICのリスニングトレーニングを行う際に、簡単な単語なのに思っていた音と違った感じがして正しく聴き取れなかったという声をよく聞きます。何回聴き直しても音が違う感じがするということがありますよね。
なぜそういう現象が起こるかご存知ですか?
もともと該当の単語の発音を正しく知らなかった場合を外すと原因は主に以下の2つが考えられます。

①発話の中で前後の単語の音がくっ付いたり影響しあったりして音の変化が起きる場合 (リンキング・同化・脱落)
②発話の中で特定の単語がフルの発音でなく弱いバージョンで発音される場合 (Reduction: リダクション=音の弱化)

ここでは②のリダクションに絞ってそのしくみを確認していきましょう。

①については以下のブログ記事で詳しくまとめていますのでそちらも参考にされてください。

TOEICリスニング力UPのカギとなる音声変化ルールまとめ(リンキング・同化・脱落)

音の弱化(リダクション)が起こる品詞

先ず、英語の単語は基本的に強勢 (Stress: 強く発音される音節) を持つ「内容語」と持たない「機能語」の2種類に品詞によって区別されます。そして弱化は「機能語」の一部で起こります。
ざっくりとこの2種類をまとめると以下のようになります。

内容語 (Content words) 機能語 (Function words)
文の意味に大きく関わる語 文の構成に大きく関わる語
強勢を持つ 強勢を持たない
名詞、一般動詞、形容詞、副詞、疑問詞 etc. 冠詞、助動詞、be動詞、人称代名詞、前置詞、接続詞 etc.


※例外として機能語でも文末に来る場合や文脈上意味を強調させたい場合 (Prominence) などは強勢を持つことがあります。
例えば下記のような文脈では機能語で通常弱勢のbe動詞が意味上の強調の為に強勢を置いて発音されることがあります。

“Is the bank open today?”
“Well, it is Sunday.”

TOEICリスニングのPart 2でも出てくるような会話で、このようないわゆる「間接的な返答」では文字通りの情報だけでなく言外の意味を含めたコミュニケーションが特徴ですが、その内容を強調するために強勢を持たせることもしばしばです。

それでは、今回の記事の本題である機能語の中でも弱化が起こりやすい (もちろんTOEICリスニングの会話でも頻出) 単語の例を見ていきましょう。

can (名詞 / 助動詞)

強形 弱形
ˈkæn kən

「缶」として使う際にはもちろん名詞(内容語)なので強形です。
ただし助動詞として使う場合は機能語なので基本的に弱形が使われます。ここがTOEIC学習者がよくつまづく部分ですね。can = /ˈkæn/ という固定観念みたいなものが定着しているとうまく聴き取れない場合が多いです。
例外としては、相手の質問に対する返答で”Yes, I can.” などと助動詞以降を省略し助動詞canが文末にくる際は強形で発音します。

こちらの例文音声の”can”の部分に注目して聴いてみてください。

 

“Maybe you can change the color of the logo.”
「ロゴの色を変えてみることもできそうですがどうでしょうか。」

こちらの助動詞”can”は弱く短く/kən/と発音されていますね。

以前もご紹介したRachel先生のYouTubeシリーズにcanの弱化に関して分かり易く説明したものがありますますのでぜひこちらのビデオをご覧になってください。

ちなみに、否定の”not”がついて縮約された場合は、can’t /ˈkænt/と強形になります。

have (一般動詞 / 助動詞)

強形 弱形
ˈhæv həv / əv / ə

haveに関しては一般動詞として使用する際には内容語なので強形を使います。
ただし完了形で助動詞として用いる際には機能語となるため弱形が使われます。発音上は特に(法)助動詞の後に続いてshould’veのようになると/h/を落とした/əv/やさらに/v/を落とした/ə/にまで弱化が進むので要注意です。

まずは以下の例文音声で”has”の弱形/həz/を聴いてみましょう。

 

“Mr. Scott has been out sick this week.”
「スコットさんは今週病気でお休みしています。」

余談ですが、この記事の後半の前置詞ofの部分に書いている通りofの弱形も/əv/もしくは/ə/と全く同じ発音なので、アメリカ人の中にはわざと(もしくは知らずに) should haveをshould ofのように書く人もいます。

また、カジュアルにshould haveの弱形の発音/ʃʊdə/をshouldaのように書くこともあります。
下のビデオはその発音を慣用表現”shoulda woulda coulda” (過去のことを「~だったら、~した方がよかった、~しただろうに、~することもできたのに、などと嘆いてもしょうがないといった意味。日本語の「たられば」に近いでしょうか) を含めて紹介していますので発音に注目しながらご覧になってください。

助動詞のhaveについても、否定の”not”がついて縮約された場合は、haven’t /ˈhævnt/と強形になります。

are (be動詞)

強形 弱形
ˈɑːr ər

be動詞は機能語なので基本的には弱形を使います。
こちらも”Yes, they are.”などのように文末に来る際には強形が使われます。
ビデオで発音を確認してみましょう。

また、こちらもnotがついた場合はarn’t /ˈɑːrnt/と強形になりますので注意してください。

to (前置詞)

強形 弱形
ˈtuː

toは前置詞なのでこちらも基本的には会話では弱形を用いることがほとんどです。
代表的な例外は”This is what I was referring to.”などのように文末に来る場合に強形を使うことです。

さらに、アメリカ・カナダ・オーストラリアの発音では文の中で直前の単語が母音で終わる場合(go to /ˈgoʊ tə/ のような)は連結して頭のtをflap t (歯茎はじき音: 日本語のラ行に近い)で発音することも多いです。

以下の例文音声で確かめてみましょう。

 

“Do you want me to pick you up at the airport tomorrow?”
「明日あなたを空港でピックアップしましょうか?」

こちらの文で前置詞”to”は弱形で、且つ直前の”me”の語尾の母音の影響で/t/がflappingされて[ɾə]と発音されています。

 

at (前置詞)

強形 弱形
ˈæt ət

こちらも前置詞(機能語)なので基本的には弱形を使い、”What are you looking at?”などのように文末に来る場合に強形を使います。

単語の音の構成が母音+/t/なので、主にアメリカ・カナダ・オーストラリアの発音では文の中で次の語が母音で始まる場合(at itのように)はatの/t/がflap t化、次の語が子音で始まる場合(at meのように)は閉鎖のみを行いリリースせずに次の子音に連結させることが多いです。

以下の例文音声でも弱化+リンキングでスムーズに発音されています。

 

“Could you have a look at the attached presentation material?”
「添付したプレゼン資料をちょっと見てもらってもいいですか?」

“at”は弱形/ət/で、手前のlookの語尾の子音/k/と「子音+母音」のリンキング、後ろのtheとは「Stop子音+子音」のリンキングで前後ともつながっています(look͜ at͜ the)。

 

for (前置詞)

強形 弱形
ˈfɔːr fər

forも同じく前置詞(機能語)なので基本は弱形、文末など特殊な場合に強形を使います。

文中でfor itのように後ろの語が母音で始まる場合は/r/と連結させることが多いです。

 

of (前置詞)

強形 弱形
ˈʌv əv / ə

ofも前置詞(機能語)のため基本的には弱形を使い、”Not that I know of.”など文末に来る場合は強形ですね。

haveの項でも少し触れましたが、弱化が進むと/ə/にまで弱まってしまいます。

そうした弱形の発音からこちらもカジュアルにlot of→lotta、kind of→kinda、out of→outtaに表記されることもあります。

 

as (前置詞 / 接続詞)

asは前置詞と接続詞の用法がありますがどちらも機能語なので、何らかの理由で強調する場合を除いて基本的には弱形を使います。

強形 弱形
ˈæz əz

and (接続詞)

強形 弱形
ˈænd ənd / ən

接続詞andも機能語に分類されるので基本は弱形です。ビデオで音を確認してみてください。

or (接続詞)

こちらも機能語なので多くの場合弱形で発音されます。

強形 弱形
ˈɔːr ər

that (代名詞 / 関係代名詞 / 接続詞 / 形容詞 / 副詞)

強形 弱形
ˈðæt ðət

thatは上に書いたように様々な品詞の用法がありますが、基本的に機能語である代名詞・関係代名詞・接続詞の場合は弱形で、内容語である形容詞と副詞の場合は強形で発音されます。

機能語の場合に弱形で発音することに加え、下のビデオで説明されているように次の単語が母音で始まるときはFlap tで、次の単語が子音で始まるときは止めた息のリリースを行わなずに次の子音へ繋げるStop tと呼ばれるリンキングを合わせて活用することでよりスムーズさが培われます。

まずはこちらの例文音声で実際の音を確認してみましょう。

“Not that I know of.”
「私の知る限りはそうではないです。」

“that”は弱形で且つその後ろに母音スタートの語”I”が続くので語尾の/t/をflappingして[ðəɾ]となっています。

him (代名詞)

人称代名詞は機能語なので、この語も基本的には強勢を持たせずに発音しますが、カジュアルな会話やスピードの速い会話などで弱化が進むと/h/の音が脱落することもあります。

強形 弱形
ˈhɪm ɪm / əm

/h/の脱落を含むリダクションについて以下のビデオで音を確認しましょう。

her (代名詞)

上のビデオに出てきましたが、この語も上のhimと同様に弱化が進むと/h/が脱落することがあります。

強形 弱形
ˈhər ər

them (代名詞)

こちらも弱化が進むと頭の/ð/が脱落することがあります。

強形 弱形
ˈðem em / əm

themのリダクションについて以下のビデオを参考にしてください。

ここまで見てきて鋭い方は気づかれたと思いますが、基本的に弱形になると母音は/ə/ (schwa)となります。この音を正しく認識できて正しく発音できることがある意味英語のリスニングの一つのキーになります。

まとめ

TOEICテストや英語コミュニケーションでのリスニング強化としてシャドーイングやディクテーション、音読などに取り組まれている方が多いかと思いますが、上達が停滞して壁を感じている方はぜひ今回取り上げた音の弱化を意識して練習してみてください。
特にシャドーイングにおいては、全ての語に強勢を置く間違ったやり方で行ってしまうと英語の本来のリズム(強勢ベースの「強勢拍リズム」)に乗れずにぎこちなく遅いものになってしまいます。そうすると本来正しいシャドーイングで得られるはずの音声知覚の高速化の効果は下がってしまうでしょう。

また、リスニングだけでなくスピーキングに関しても、内容語を中心に正しく強勢を置き、今回取り上げたような弱化を身に着けて弱勢部分をスムーズ化させることでうまく強勢拍のリズムに乗ることができ、非常にナチュラルかつスピーディに行うことができるようになります。

今回長い記事になりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございます。
皆さんの英語力強化・TOEICリスニング対策の一助となれば幸いです。

最後に、今回取り上げた機能語の弱化をまとめ表にしておきますのでレビューに使用してください。

こちらの表は画像にしているので英語学習の情報収集にPinterestを使われている方はぜひ保存して見返して使ってください。

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