公開日:2022年12月21日最終更新日:2024年8月19日
英語の発音能力は、スピーキング時のスムーズな発話や相手への伝わり易さ、リスニング時の聴き取り(音声知覚)において非常に重要です。
ただし発音も含め英語を外国語として学ぶ際には母国語の影響でどうしても間違えやすい部分・習得しづらい部分というのがあります。
この記事では我々日本人が英語の発音を学ぶ際に、母国語である日本語の音声システムの影響で共通して間違えやすい英語の発音をまとめていきます。
内容的には英語の発音を改善し、そのうえでスピーキング・リスニング力をレベルアップさせたいと考えられている全てのレベルの学習者が対象(TOEIC学習者も必須学習内容)ですが、特に初級者の方はなるだけ早いうちにおさえておくとその後の学習がより効果的になります。
まずは英語の個別音の全体像を次の動画で確認して把握したうえで、続けて特に日本人が間違えやすい発音にフォーカスしていきましょう。
目次
英語の子音の中でも特に日本語に無い音(もしくは日本語であまり使わない音)を日本人が発音しやすい子音に置き換えてしまう傾向がよく見られます。
子音の中で間違えて発音したり混同したりしやすい組み合わせを以下に挙げますので注意して正しい発音をこころがけて練習しましょう。
日本語では/v/の音を基本使わないので、/v/の音をそれと近い/b/で置き換えてしまうことがよくあります。英語では全く別の子音なので区別して使うようにしましょう。
/b/は上下の唇を一瞬閉じてためた呼気をリリースして発する閉鎖音(破裂音)です。
/v/は上の歯と下唇を軽く当ててその狭い間を呼気を摩擦させて通して作る摩擦音です。
この2つの音を区別しない(全て/b/扱いしてしまう)と以下の全く意味の異なるペアを区別しないことになってしまいます。
上に書いた発音の仕方注意して区別して発音の練習をしてください。
因みにvaseはイギリス発音では/ˈvɑːz/となります。
/v/の発音はこちらのビデオを参考にしてください。
日本語のタ行の「チ(chi)」の影響から英語の/t/の後に「イ」に近い母音の/iː/や/ɪ/が続く場合に日本語の「チ」を使ったり/t/を/tʃ/に置き換えてしまうことが起こりがちです。
ticket /ˈtɪkət/を「チケット」と言ってしまうのが分かり易い例ですね。
日本語ではもちろんそれで大丈夫ですが、英語の場合は頭の音が全然違うので気を付けましょう。
以下の単語を頭の子音の違いを意識して発音練習しましょう。
/t/は下の縁全体を上の歯の裏の歯茎全体に当てて閉鎖した後に舌の前方部分をはじくように呼気をリリースして作る音(閉鎖音・破裂音)です。
/tʃ/は/t/の後に瞬時に/ʃ/に繋げて作る音です(破擦音)。/t/のリリース後すぐに舌の前方上面と上顎の歯茎から硬口蓋(歯茎から上顎を少し奥に進んだ部分)までの広い範囲を近づけてその隙間を通る呼気を摩擦させて作ります。
日本語ベースのカタカナ英語発音だとthの音/θ/を全て/s/で置き換えてしまっているので注意が必要です。以下のポイントに注意して区別して発音するようにしましょう。
/s/は舌先を上の歯の付け根の歯茎の当たりにかすかに当ててそこの間を通る呼気を摩擦させて作る音です。
/θ/は舌先を上の歯の歯先か歯の裏にかすかに当ててそこの間を通る呼気を摩擦させて作る音です。
/s/はできるが/θ/の音がうまく作れない場合は、/s/から舌先を大きく下げると/θ/の音になる、というイメージでトライしてみてください。
また、稀に本来/s/で発音すべきところを/θ/で発音してしまっている方も見受けられます。元々の発音の癖か、もしくは必要以上に「英語っぽくしよう」という作用が働いてそうなってしまっていることが考えられます。その場合は/s/は舌先をより上に上げるというイメージで発音しましょう(細かく言うと日本語のサ行よりも更に若干舌先を上に上げると正しい/s/の音になります)。
/s/の発音はこちら。
/θ/の発音はこちら。
上に書いた/t/と/tʃ/の関係に似ていますが、日本語のサ行の「シ(shi)」の影響から英語の/s/の後に「イ」に近い母音の/iː/や/ɪ/が続く場合に日本語の「シ」を使ったり/s/を/ʃ/に置き換えてしまうことがよく起こります。
以下の発音上のポイントをおさえてきちんと区別して発音するように練習しましょう。
/ʃ/は舌先から舌の上面の中央くらいまでの広い範囲と上の歯茎から硬口蓋(歯茎から上顎を少し奥に進んだ部分)の範囲を近づけてそこを通る呼気を摩擦させて作る音です。日本語の「シ」に似ていますが、厳密に言うと「シ」より更に広い範囲(舌の上面の中央くらいまで)を近づけて摩擦をさせるのが/ʃ/になります。
細かな点ですが、”she”は強調して強勢を持たせた場合の発音として比較しています。
上の表のseat vs. sheetに加えて、間違えるとインパクト大のsit vs. shitも含めてこちらのYouTubeビデオで確認しておきましょう。
Rachel先生の比較ビデオもどうぞ。
この2つの音はどちらも日本語にはない音なので、それらと似ていてちょうど2つの音の中間的な音である「ラ行」の音で代用してしまうことが多いです。
以下のように/l/と/r/で全く別単語になるようなものをラ行で代用してしまうことでネイティブスピーカーにとってはどっちともとれてしまうような(もちろん文脈が理解の補助になると思いますが)ことが起こり得ます。
正しく/l/・/r/の音を区別して発音・聴き分けるように練習しましょう。日本語のラ行とも区別が必要なのでそちらも加えています。
/l/は舌先を上の歯茎(上の前歯の裏の付け根)にくっ付けて舌の左右両側のスペースから呼気を出すことによって作る音です。
ラ行は/l/で舌先を当てる歯茎よりも少し奥の位置に一瞬舌先を触れさせることで発音しています。
/r/は舌先は上顎には当てずに下げた状態で、舌の後ろの部分を上方・後方に引き上げて左右の歯茎にくっ付け、中央に空いている舌と上顎の狭い空洞を呼気を通すことによって作られるこもったような音です。
/l/の発音を見てみましょう。
/r/の発音はこちら。
まずは英語と日本語の母音の違いを確認し、そのうえで特に混同しやすい・間違えやすい英語の母音の組み合わせを見ていきましょう。
日本語の母音はご存知の通り「ア・イ・ウ・エ・オ」の5つですが、英語の母音は下の表に挙げているように単母音で10種類あります。
一部似ているものもありますが、英語の母音10個を英語と異なる日本語の母音5個で置き換えてまかなおうとしてしまうのが日本人の英語学習者に多く見られる傾向です。そうしたカタカナベースの英語母音発音を以下の「発音のポイント」をヒントに改善していきましょう。
表では英語母音のとなりに日本語母音を置いていますが、これは音が同じという意味ではなく、各英語母音を多くの日本人がどの日本語母音に置き換えて使ってしまっているかを示しています。
「ア」ほど口は開けず、軽く口を開けて唇・舌をリラックスして発音。「ア~オ」のどれとも言えない中間的なあいまい母音(schwa)。
続けて、日本人が混同してしまうことの多い英語の母音の組み合わせを子音と同様に挙げていきます。
どちらも日本語のカタカナ発音だと「ア」になってしまう音のペアですね。
上の表に書いた発音の仕方に注意して区別して発音しましょう。口の中の意識として、/æ/は前の方で発音し/ʌ/は真ん中から後ろにかけてというイメージでトライしてみてください。
/æ/の音や作り方をこちらのビデオで確認してみましょう。
/ʌ/はこちら。
こちらも発音を混同しやすいペアで、カタカナ発音だと/ʌ/は「ア」で/ɑ/は「オ」になってしまう音です。
区別の仕方として口を閉じ気味で短く発音する/ʌ/に対し、それをもっと顎を下げて喉を広げて長く発音したのが/ɑ/というイメージです。
こちらのYouTubeもぜひ参考にしてみてください。
このペアはカタカナ発音ではどちらも「オ―」と発音してしまうものです。
/ɔː/は上のまとめ表に書いたように「オー」よりも舌・顎全体を下げて発音する音で、/oʊ/はほぼ「オ」と同じ/o/という音から/ʊ/へスムーズに移行させる二重母音です。
/ɔː/の発音はこちらを参考にどうぞ。
/oʊ/はこちら。
こちらもカタカナ発音だとどちらも「オ―」としてしまうペアです。
/oʊ/は一つ前の項に書いた通りで、/ɔːr/は母音の後ろに/r/がついたR性母音というもので、/r/がついただけでなくその前の母音部分も/r/無しの/ɔː/よりやや上めで発音することがポイントです(高さ的にはカタカナの「オ」あたりです)。
こちらは両方ともR性母音のペアでカタカナ発音だと「アー」としてしまう音です。
/əːr/は口を閉じ気味のリラックス状態でつくる/ə/から/r/に移行する音で、/ɑːr/は口を大・喉をきく開けて(「ア」よりも大きく)発音する/ɑ/から/r/に移行していく音です。
最後まで読んで頂きありがとうございました。これらの日本語・英語の音の違いを先ずは意識して、正しい発音の練習をしていくようにしましょう。
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筆者(TOEIC990点満点30回以上・英語教授法修士号・英語発音指導士資格取得)が指導をしている福岡のTOEICコーチングスクールRepでは基礎英語力の構築から読解・聴解のトレーニングやTOEIC問題解答のための戦略的なリーディング・リスニングの手法まで総合的に身につけて頂く3ヵ月短期集中型の「TOEICコーチングコース」を提供しております。
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