公開日:2020年5月21日最終更新日:2024年7月30日
TOEICリスニングである程度アメリカ人スピーカーの発音に慣れてきた時に学習者の次の壁となることが多いのが各国のスピーカーの英語発音の特徴の違い(訛り: accent)です。このブログ記事ではそういった方たちのリスニング学習促進のためにそれぞれの国の発音の特徴をまとめていきます。
TOEICリスニングセクションでは、アメリカ人・カナダ人・イギリス人・オーストラリア人(ニュージーランド人を含む)の4カ国(ニュージーランドを含めると5カ国)のスピーカーたちがそれぞれの国特有の英語発音でスピーキングを行っています。私たちは基本的に学校教育でアメリカ英語発音をベースに学習をしてきており、特にイギリス英語発音・オーストラリア英語発音に苦手を感じる方が多いです(カナダ英語発音はアメリカ英語発音に近いので馴染みやすいです)。
この記事ではTOEICリスニング各国のスピーカーの英語発音概要を比較を交えつつ書いています(より詳しく踏み込んで説明を書いた個別のブログ記事のリンクも載せていますのでそちらも苦手克服に役立ててください)。
こちらの記事の内容に関しては、ある程度発音の基礎知識がある方向けとなります。
目次
TOEICの各国のスピーカーの発音の特徴一覧です。R性母音の有無と各リンキングパターンについて〇 (ほぼ必ず行う)、△ (行う場合と行わない場合がまちまち)、× (ほぼ行わない)で示しています。それぞれのTOEIC現行(記事作成時点)スピーカーの特徴なので、各国の一般的な発音と若干異なる部分もあります。
「R性母音」とはアメリカ英語発音・カナダ英語発音での/əːr/・/ɑːr/・/ɔːr/・/eər/・/ɪər/のような母音とrの音が合体した音のことを指します。上の表にある通り、イギリス英語発音とオーストラリア英語発音ではR性母音が無くこうした母音の後のrの音を発音しません。
以下の例文音声で発音の違いを聴いてみましょう。
First off, let’s look at our sales figures last month.
▶アメリカ英語 (R性母音有り)
▶イギリス英語 (R性母音無し)
▶オーストラリア英語 (R性母音無し)
ただし、イギリス・オーストラリア英語でも次の例文の”far as”の部分のように前の単語が/r/で終わり次の単語が母音で始まりリンクする場合は/r/を発音します(後ろの2つの下線部分は/r/は発音しません)。
As far as I remember, her name is Jane.
▶イギリス英語 (far asの連結箇所のみR性母音有り)
▶オーストラリア英語 (far asの連結箇所のみR性母音有り)
子音で終わる単語に母音で始まる単語が続く場合に子音と母音を繋げて発音するリンキングのパターンです。
こちらは4か国のスピーカー全てに見られます。
例文音声でこのリンキングパターンを確認しましょう(下の例文の下線部が連続してリンクしています)。
Do you mind if I open the window?
▶アメリカ英語
▶イギリス英語
▶オーストラリア英語
子音で終わる単語の後に同じ子音で始まる単語が続いた際に二つの子音として発音せずに繋げて一つの長めの子音として発音するリンキングのパターンです。
こちらも4か国全てのスピーカーに見られます。
例文音声を聴いてみましょう。
Martin took care of it.
二つの単語が並んで「母音+/t/+母音」という/t/が母音に挟まれた場合に通常の/t/の発音でなく、上顎の歯茎やや後ろの部分を若干強めに短く叩くように有声音として発音するリンキングのパターンです。日本語のラ行をよりアタックを強く発音したような音です。
一つの単語内で「母音+t+母音」となっている場合も同様です。
実際に例文で確認してみましょう。
William is in charge of that issue.
▶アメリカ英語 (子音+母音のリンキングに加えてフラッピング有り)
▶イギリス英語 (子音+母音のリンキングのみでフラッピングは無し)
▶オーストラリア英語 (子音+母音のリンキングのみでフラッピングは無し)
こうした現象は/d/が同様に母音に挟まれた際にもよく起こります。
Flap tはアメリカ英語発音・カナダ英語発音では多く用いられています。TOEICのオーストラリア英語発音では通常の/t/の発音とflap tの発音が混在しており、イギリス英語発音ではほとんど使われていません。
さらにイギリス英語発音では/t/が音節の頭に来るときに、後ろの母音に強勢が無い場合でも有気音(閉鎖音の子音に/h/の音を伴ったもの)で発音されることがしばしばみられます。なのでこうしたアメリカ英語発音でflap tになるような状況の/t/は、イギリス英語発音では喉で擦れた強い呼気(/h/の音)を伴って発音されることが多いです。特に現行のイギリス人スピーカーはこの特徴が強いように思います。
/t/だけに限らずstop (閉鎖音) の子音 /t/・/d/・/p/・/b/・/k/・/g/に関するリンキングのパターンで、特に/t/の場合に顕著なのでそう呼んでいます。これらの子音はフルで発音すると大きく分けて①空気の流れを完全に止め、②リリースする、という2段階のステップがあります。二つの単語が並んで先行の単語が上記のstopの子音で終わり、続く単語が子音で始まる場合に、①のみを行いそのまま直接次の子音にリンクさせてスムーズな発音を行います。
こちらも例文を聴いてみましょう。
Bring your umbrella in case it rains.
▶アメリカ英語 (tはストップのみでリリースは無し)
▶イギリス英語 (tはストップ+リリース)
▶オーストラリア英語 (tはストップ+ほんの少しリリース)
アメリカ・カナダ・オーストラリアの英語発音ではこうしたリンキングはよく使用されています。イギリス英語発音ではそうせずにフルで①②を行うか、もしくは/t/を声門閉鎖音という声帯を閉じることで呼気をストップして次の子音に繋げるリンキングがしばしばみられます。
以上、それぞれの国の英語発音の特徴を見てきましたが、以降さらに個別の発音の違いににフォーカスして確認していきましょう。
因みに、リンキング等の「英語の音声変化」の基礎についてしっかりおさえておきたいという方には以下のブログ記事もお勧めです。
TOEICリスニング力UPのカギとなる音声変化ルールまとめ(リンキング・同化・脱落)
イギリス英語とアメリカ英語の子音の発音の大きな違いは上に書いたように、イギリス英語では/t/と/d/のflappingを基本的には行わないというところです。
以下、母音の違いをいくつか具体的に挙げていきます。
このイギリス英語発音の/ɒ/という音は、アメリカ英語発音の/ɑ/と比較すると顎や舌の位置を上げ、後舌を後ろに引いて唇を丸く突き出して作る音です。
The event is not until July.
例文音声ではnot until部分のフラッピングの有無も明確に発音の差が出ていますね。
下のビデオの2:01以降でこれらの母音の違いが比較されていますので確認してみてください。
例文で音の違いを確認してみましょう。
Would you ask her to call me back?
こちらのビデオのビデオの1:29からこれらの母音の発音の違いを比較していますのでご覧になってください。
I’ll let you know when she comes.
先ほどのビデオの0:58からこれらの母音の違いについて触れています。
こうした米英の母音発音の違いに関する内容は以前のブログ記事でも詳しく触れていてます。
アメリカ発音とイギリス発音の違い – 母音編1
アメリカ発音とイギリス発音の違い – 母音編2
オーストラリア英語発音においてもアメリカ発音との顕著な違いは母音に多いのでいくつか特に目立ったものをピックアップしていきます。
If it rains today, the game will be postponed.
The audio equipment didn’t work right.
The remainder of the repair cost will be charged to your credit card.
ここでは代表的なものを挙げて比較しましたが、下記リンク先の以前のブログ記事ではより幅広く説明をしていますのでそちらも合わせてご覧になってください。
オーストラリア英語発音の特徴
正直項目を設けるかどうか迷いましたが参考までに。アメリカ英語発音と差が小さいのでむしろリスニングで違いを探す方が難しいくらいだと思います。
一般的にはCanadian Raisingと言って無声音の子音の前に来る/aɪ/・/aʊ/の最初の音のスタート位置がアメリカ英語発音より上がって/ʌɪ/・/ʌʊ/もしくは/əɪ/・/əʊ/くらいで発音することが大きな特徴と言われています。私の以前の同僚のカナダ人のaboutは確かに/əbəʊt/で目立っていました。
ただTOEICのカナダ人スピーカーに関してはそうした特徴はかなり薄いように感じますので、アメリカ英語発音が正しく聴き取れる状態であれば問題ないでしょう。
TOEICでは「オーストラリア英語(ニュージーランド英語も含む)」という形で扱われており、発音も似ている部分が多いので、オーストラリア英語発音の特徴をきちんとおさえておけば受験において基本的には問題ないかと思います。
こちらも参考情報までに少しニュージーランド英語発音の特徴を書いておきます。
アメリカ英語発音の/æ/に当たる母音を/ɛ/で発音することがあります。
black /ˈblɛk/
日本語の「エ」に近づいた感じですね。
アメリカ英語の/ɪ/の母音をニュージーランドでは/ə/と発音することがあります。
オーストラリア人がそのニュージーランド訛りを取り上げて「ニュージーランド人はfish and chipsをfush and chupsって言うよね」とネタにし、逆にニュージーランド人はオーストラリア訛り(/ɪ/ → /i/)を取り上げて「オーストラリア人はfeesh and cheepsやん」と互いに責め合っているという古くからの冗談もあるようです。
ニュージーランド英語発音もオーストラリアと同じくR性母音が無いので、そもそも母音の後の/r/は発音しませんが、更に/eə/の部分が/iə/と発音されることもあるようです。
それによってhereとthereの母音部分が同じになる(/ˈhiə/と/ðiə/)、ということですね。
ニュージーランド英語発音では、単語の最後に来る/l/や母音の後に来る/l/でその後ろに母音を伴わないもの(いわゆるdark /l/と言われる暗い音色の/l/の発音)が母音(か半母音)のように発音されることがあります。
単語の例を挙げると、ball, wall, cool, feel, deal…,etc.
どのような母音類に変化するかですが、[o], [ʊ], [w]あたりで結構幅があるようです。
こうした/l/の母音化はオーストラリア英語発音でも見られます。
ニュージーランド英語発音の特徴に関連して、楽しくオーストラリア英語発音とニュージーランド英語発音の違いを語り合っているYouTubeがあったので、見てみてください。7:00くらいのところで”fish and chips”の話題も出ています。
以上がTOEICリスニングに登場するアメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリア(ニュージーランド)英語発音の特徴となります。苦手を感じていた国の英語発音の特徴についてクリアになりましたでしょうか。それぞれの国のスピーカーの英語発音の特徴をおさえた上で、それらを意識したリスニングや訛りも含めた完コピを目指した音読やシャドーイングで音声を正確に捉える力を更に研ぎ澄ましていきましょう。
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筆者(TOEIC990点満点30回以上・英語教授法修士号・英語発音指導士)が指導をしている福岡のTOEICコーチングスクールRepでは基礎英語力の構築から読解・聴解のトレーニングやTOEIC問題解答のための戦略的なリーディング・リスニングの手法まで総合的に身につけて頂く3ヵ月短期集中型のプログラムを提供しております。ご自身のキャリアアップに向け大きく英語力やTOEICスコアを伸ばしたいという方はぜひホームページをご覧になってお気軽にお問い合わせください。
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