公開日:2020年10月15日最終更新日:2024年12月6日
目次
TOEIC公開テストのリスニングに関して、試験会場の環境によっては音響があまり良くなく音声が聴きにくい場合もあります。
特に2020年9月のTOEIC公開テスト再開後からは、コロナの影響もあってか今までのメイン会場とは違う臨時の会場でテストが開催されることが多く、そうした会場で音響が悪くリスニング音声が聴きづらかったと指摘される受講生の方がかなり多かったです(私もいくつか非常にリスニングしづらい会場を経験しました)。
コロナ後も正直試験会場の当たりはずれはあるので、音響的に不利な環境下でもできる限り実力を発揮できるような対策を挙げていきたいと思います。
TOEICテスト会場でのその場での対応としては、テスト開始前の音チェック時に音量アップもしくは席移動を申し出ることです。試験官の方が「何か問題がある方は手を挙げてください」と言われるので、その際多少勇気はいるかもしれませんが、大事なテストの出来に関わることなので堂々と申し出るようにしましょう。後ろの方の席から前の席へ、端の席から中央の席へ、など聞こえやすいと思われる空席の有る場所移動させてもらえる可能性があります。
実際会場の音の問題に直面された受講生の方からは、音量云々というより音質的にこもっていたり、ハウリングするような状況があったというお話をよく聞きます。その場合は音量アップや席移動の効果が薄い可能性があり、悪い音質でもリスニングの実力を発揮する事前の対策が必要となります。
悪い音環境でも焦らずに集中力を保ち、しっかりと本来のリスニングの実力を発揮するためには、自習の際に少し負荷の高い高地トレーニング的な要素を取り入れることが効果的です。具体的には以下の方法がありますので、普段の学習に取り入れてみてください。
また、先に言っておくと、イヤホン・ヘッドホンを使ったリスニングは雑音が少なく逆に聴き取りに非常に有利な条件になってしまうので、移動中などやむを得ない場合を除いて極力リスニング学習では使用せずにスピーカーの音を聴くようにしましょう。
TOEIC公式問題集を使ったリスニング問題演習を少し聴きづらいくらいまで音量を下げて行う方法です。当然普通の音量より聴き取りは難しく、小さな音量を拾うために集中力も更に鍛えられる練習方法です。
スピーカーをまるまる大きめの箱で覆ってしまったうえでTOEIC公式問題集のリスニング演習を行う方法です。音質が悪くなり、聴きにくさがかなりアップするので高地トレーニングとしてはうってつけです。
この方法はスピーカーを覆う箱の材質によって響きが変わってきます。比較的柔らかめの素材(ダンボール箱など)で覆うとこもったような音質になり、逆に硬めの素材(プラスチックや金属のごみ箱など)で覆うと反響の強い音質になります。個人的には特に反響の強い音質が一番聴き取りしにくい印象を受けます。様々な状況に備えるため、出来れば両方試してみてください。
実際に音が響いて聴きづらいと評判の会場で私も受験する機会がありました。受講生の方が仰るように音が良く響いて反響することで細部が聴きづらい箇所が多くありました。
自分で実感してみての対策のトレーニングとしては、リスニング音声に反響を足すエフェクトをかけることで実際の状況に近づけるという方法も有効かと考えます。Audacityなどの音声再生ソフトにはエフェクト機能がたくさんあり、その中でリバーブというエフェクトをかけることで響いた感じはある程度再現できました。
エフェクトをかけた状態でのリスニング解答やシャドーイングなどのトレーニングを取り入れて、多少の音の反響には対応できるように備えていきましょう。
以下、通常バージョンとリバーブのエフェクトを(やや強めに)かけたバージョンを聴き比べてみてください。
通常バージョン
リバーブをかけたバージョン
発言内容は、以下の通りでした。うまく聴きとれましたか?
“Do you mind helping me out with the presentation slides?”「プレゼンのスライドを手伝ってもらってもいいですか?」
韓国版のTOEIC過去問集のリスニング音源(Webからダウンロード)には通常バージョンに加えて、本番を想定したノイズを加えて若干聞きにくくしたバージョンも提供されていますので、その音源を使ってリスニングの練習をすることは一つの対策となります。
更に韓国版TOEIC過去問集は一冊に10回分のテストが収録されているので練習量としてのボリュームもメリットですね。
ただしデメリットとしては、当然英文以外の解説は全て韓国語表記なので、韓国語で解説が読める人や解説が無くても解答を確認して自分で正しい解答の根拠を見つけて復習が可能な上級者向けに限られるという点が挙げられます。
当然ですが正攻法としてそもそもの英語リスニング力を向上させることも重要です。
シンプルにまとめると英語リスニング力は「音声知覚」と「意味理解」の2段階で説明されることが多く、それぞれの代表的な強化方法は以下の通りです。
①音声知覚
まずは英語の発音に関する基礎知識学習と発音練習で正しい発音を身に付けることが第一歩です。英語の個別音・音声変化・強勢拍リズムは発音の基礎として身に付けておきましょう。独学ではやや難しい部分なので発音矯正の専門家から指導を受けることが望ましいです。独学で頑張りたいという方は以下の記事に発音改善のポイントをまとめていますので参考にして練習してみてください。
個別音スピーキング・リスニング力UPのためにマストでおさえるべき「日本人が間違えやすい英語発音」まとめ
音声変化(リンキング・同化・脱落)TOEICリスニング力UPのカギとなる音声変化ルールまとめ(リンキング・同化・脱落)
音声変化(リダクション)TOEICリスニングが苦手な方必見 | 音の弱化 ― Reduction(リダクション)とは?
強勢拍リズムスムーズな音読・シャドーイングに欠かせない英語の強勢拍リズム(品詞別の強勢有無一覧表付き)
イントネーションTOEICリスニングパートで発言の理解を促進するイントネーションの基礎
各国のスピーカーの訛りTOEICリスニング5カ国のスピーカーの英語発音特徴まとめ(アメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダ・ニュージーランド)
ある程度正確な発音の力が身に付いたらシャドーイングに取り組みましょう。発音がガタガタな状態でシャドーイングに取り組んだ場合、効果が思うように出なかったり、うまくできずに学習モチベーションが下がってしまうなどの悪影響も考えられますので要注意です。
シャドーイングは音声知覚の自動化を進める効果があると言われています。自動化が進むとワーキングメモリ(認知活動において情報を保持・処理する仕組み)内での音声知覚に要するリソースが少なくて済むようになり、より多くを次に挙げる意味処理に割くことが可能になります。
②意味理解
音声が知覚されるとその次に意味理解の処理を行って内容を理解していきます。その段階では語彙・文法・文脈など様々な情報を使って処理が行われますが、そこでの一つ大きなネックとなるものが日本語と英語の語順の違いです。英語を英語の語順のまま理解できない場合、リーディングでは返り読みで時間をかけて日本語訳を作って理解するという手法(訳読法)を取ることは可能ですが、リスニングでは文字でなく音声なので返り聴きはできませんよね(一時記憶を辿って戻ることは可能ですが時間・負担がかかり、リスニングを行いながらずっと同時に行うことは難しいです)。結果、文としての意味理解ができず目立った単語からなんとなく文意を想像するという正確性を欠いた理解に陥ってしまうことが多く見受けられます。
そこで英語を英語の語順のままスピーディに理解していくトレーニングとして、スラッシュリーディングに取り組んでいくことをおすすめします。スラッシュリーディングを反復練習して自動的に素早く英語の語順のまま理解することができると意味理解処理の負担が小さくなり、リソースを問題解答に必要な推測や意図理解などの思考により多く割いていくことが可能になっていきます。
その段階に到達すると、内容理解+@の思考が必要なアビメ(Abilities Measured)の以下の項目の対応力が上がってきます。
日頃からリーディング学習の際にはスラッシュリーディングに取り組むこと、リスニング練習用のスクリプトは必ずスラッシュリーディングを行って頭からスムーズに意味が取れる状態にしたうえでシャドーイングなどのトレーニングに取り組むこと、これらを徹底していきましょう。
スラッシュリーディングの効果とやり方に関しては以下のブログ記事でまとめていますので是非参考にしてください。
TOEICリーディングスピード不足・Part 7色塗りを卒業するための「スラッシュリーディング徹底解説+演習」
これに関しては音響が悪い中でも聴きとるという内容ではなく、やむなく聴こえなかった部分を効果的な推測で補うという方法です。
TOEICリスニング問題内容に関連するスキーマ(一般化された知識)を正しく形成していくことで、聞こえなかった部分をトップダウン処理で補って理解を促進していくことが可能です。そのためにはより多くのTOEIC公式問題を経験することや、その際に一般化を意識して学習を進めることが有効です。例えば苦手な方が多いPart 2の間接的な応答や平叙文に関しては、それぞれの発言の具体的な意味内容の理解だけでなく、以下の例ように一般化したコミュニケーションのパターンとして捉えていこうと取り組んでみてください。
・提案や依頼に対して自分の予定を答えることで断るパターン・依頼や質問に対して担当者が別だと答えて自分は関知しないことを伝えるパターン・平叙文の発言に対して自分の意見を述べるパターン・平叙文の発言に対してそれを支える根拠を述べて賛同するパターン
Part 3・4であれば、会話の流れのパターンを理解して展開を予測する、設問のパターン(概要を問う問題、部分的な情報を問う問題、意図を問う問題といった)を理解して解答に必要な情報がどのように発言されるかを予測するといった活用が可能です。
また、表現をコミュニケーション上の機能別に一般化して捉えることは内容理解、問題への対応力を格段に上げていきます。例えば”What does the man suggest the woman do?”という設問を見た段階で「提案」に関連する英語表現のスキーマがしっかり自分の中にあることで、会話の中でどのような表現が発言されるかということや、その発言部分に解答に必要な情報が含まれているだろうということを予測してリスニングに取り組むことができ解答を容易にすることが可能になります。これはリーディング問題でも同様に有効です。
このような効果的な解答を行っていくために、こちらの機能別英語表現のまとめ記事もぜひ併せて読んでみてください。
このように有効活用できるスキーマですが、ある意味諸刃の剣という側面もあり、リスニング力を磨かずにそれだけ(特に文中の目立った単語のスキーマ)に頼ってしまうと悪影響も考えられるので注意が必要です。TOEICの問題が、文意を正しく理解せずに部分的な単語の聴き取りとそのスキーマを使った予測に頼っている受験者を間違いの選択肢に誘導するように作られているからです。
例えばPart 2で、”Can we try that French restaurant tonight?”という発言の中で聴きとれたrestaurantという単語をベースにその語に関連する知識に頼って解答すると”A reservation for 3.”という全く的外れな解答を「レストランと予約」という関連性があると判断して選択してしまうということが起きます(というか部分・単語しか聴きとれないとそのようにしかやりようがないとも言えます)。先ずは正確なリスニング力を身につけることを先決に考えてください。
以前は音響の問題はそこまで多くは聞きませんでしたが、今後はいつでもあり得ることと考えられます。万全の環境を期待せずに、起こり得るトラブルを想定してどんな環境でも動じずに実力が発揮できる準備をしてテストに臨むようにしましょう。
私が福岡でTOEICテスト受験を続けている中で各会場の音響やその他の情報をこちらのブログにまとめていますので、福岡で受験される方はぜひ参考にされてください。
福岡のTOEICテスト受験会場と各会場の特徴・注意点まとめ
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筆者(TOEIC990点満点40回以上・TESOL英語教授法修士号取得)が指導をしている福岡・博多のTOEICコーチングスクールRepでは基礎英語力の構築から読解・聴解のトレーニングやTOEIC問題解答のための戦略的なリーディング・リスニングの手法まで総合的に身につけて頂く3ヵ月短期集中型のプログラムを提供しております。3ヶ月のプログラムで受講生のTOEIC公開テストのスコア300点以上アップの実績がございます。ご自身のキャリアアップに向け大きく英語力やTOEICスコアを伸ばしたいという方はぜひホームページをご覧になってお気軽にお問い合わせください。
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