公開日:2019年4月2日最終更新日:2024年12月3日
目次
今回の内容ですが、皆さんご存知の通りTOEICテストのリスニングパートはアメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリアの4カ国のスピーカー(オーストラリアにはニュージーランドを含む、とされているのでそれをカウントすると5カ国)が担当しており、それぞれの国に特有の発音(訛り: accent)でスピーキングを行っています。既にお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、比較的最近(記事作成当時)新しいオーストラリア人のスピーカーが登場しました。その新人のスピーカーは以前よりやや訛りが強くなって聞きづらくなったと感じる方も多いのではないかと思います。私も前からの人と比べて正直だいぶクセが強くなったなと思いました。
ここでは皆さんが一番馴染みのあるアメリカ英語発音とオーストラリア英語発音の差異を確認していきます。実際違いはたくさんありますが特に目立った違いにフォーカスして絞って見ていきます。比較をもとに話を進めますのでアメリカ英語発音の基礎的な内容を理解されている方向けの内容となります。よく見かける「音声を聞いて慣れましょう」といった非常にシンプルなアドバイス(笑)ではなく、音声ルールの理解・効果的リスニング学習に役立つ知識を求めている方はぜひご一読ください。
まず前提としてオーストラリア英語発音はイギリス英語発音と同じくnon-rhotic (非R性)で、アメリカ発音のようなR性母音(/ər/など)というものがありません。言い換えるとオーストラリア英語発音では音節の最後に来るrや子音の直前にくるrを発音しません。例えば、”water”、”first”などに入っているrの音を発音しないということです(もちろん”red”などの音節の頭のrは発音します)。R性母音有無について詳しくはアメリカ・イギリス発音の違いに関するブログ記事でも取り上げているのでそちらも参照してください。
こちらのYouTubeビデオでも2:05からの部分で発音しないrについて触れていますね。
例文音声でアメリカ英語とオーストラリア英語のR性母音の部分の発音の違いを聴き比べてみましょう。
William is in charge of that issue.
▶アメリカ英語
▶オーストラリア英語
それではアメリカ英語発音とオーストラリア英語発音で最も差が激しく、リスニングを難しくさせている「母音」を詳しく見ていきましょう。
以降の説明にアメリカ英語発音では使われていない見慣れないオーストラリア英語発音特有の発音記号が登場していますので先に簡単にご説明します。
/ʉ/アメリカ発音の/uː/と同様に唇を円くして舌を上あごにかなり近づけた狭母音ですが/uː/よりも少し前の方(中舌)で短く発音する感じです。
/ɐ/アメリカ発音の/ɑː/よりも少し前の方(中舌)でやや口を狭めて短く発音する音です。
/oː/ (リンク先のWikipediaページは長母音の記号がない/o/の説明になります) 下の表にあるようにアメリカ発音の/ɔː/に相当するものですが、音はかなり違います。
アメリカ発音の/ɔː/はいわゆる後舌母音(back vowels)の中でもかなり舌の最高点を下げるので、ざっくり日本語の音を使って説明すると「オ」から後舌部を下げて「ア」に寄せたような音になります。
それに対してオーストラリア発音の/oː/は舌の最高点が高いため、逆に「オ」から後舌部を上げて「ウ」に寄せたような音になります。
後舌母音を舌の最高点が高いものから低いものに並べると以下のようになります。
高い
低い
下の表にこの母音を含む単語例として挙げた”call”はTOEIC Listening & Reading公式問題集5のリスニング問題でもオーストラリア英語発音で特徴的に発音されていたのでピンとくる方もいるかと思います。
*/ɑɪ/の後半の音は/e/に近く発音されることが多く、/ɑe/と表記されることも。TOEICのオーストラリア人スピーカーもその傾向が見られ、right /ˈrɑet/のように発音しています。
また、上の表にしたような全般的な特徴ではなく程度の差があるものですが、よく見られる発音で要注意なのが下記3点です。
US /ʊə/ → AU /oː/ アメリカ発音での/ʊər/が序盤で説明した通りオーストラリア発音では/r/の発音をしないので/ʊə/となりますが、多くの場合この音は/oː/と発音されます。例) sure /ˈʃoː/
例文音声を聴いてみましょう。
Sure thing.
例外として代表的なのはtourでそのまま/ˈtʊə/と発音されます。
US /ɪər/ → AU /ɪː/こちらもアメリカ発音での/ɪər/から/r/の発音を取った/ɪə/となりますが、更に場合によっては/ɪː/という長母音で発音されることもあります。例) yearly /ˈjɪːlɪ/
US /æ/ → AU /ɐː/こちらも程度は様々ですがいくらかの/æ/を含む単語が/æ/の代わりに/ɐː/を使って発音されることがあります。こちらの代表例はやはり”can’t”ですね。例) can’t /ˈkɐːnt/
We can’t use the main entrance until the construction work is complete.
US /iː/ → AU /ɪi/直前の音が側音(英語では/l/)以外の場合では、出だしの音が北米発音と異なり/ɪi/に近い音で発音されることが多いです。もちろん音は異なりますが、敢えて日本語の近い音で例えると「イー」が「エイ」に近い音で発音される感じです。例) peak /ˈpɪik/
子音に関してはアメリカ発音とオーストラリア発音では母音ほど大きな差はありませんが、比較して共通点や違う点を見ていきたいと思います。
最初に共通点としては(やや幅はありますが)、一般的にアメリカ発音で見られるようなflappingといって、/t/や/d/が母音間にきたとき(下の例の太字部分のように)に「はじき音」として舌を広く使った強めのラ行のような音[ɾ]で発音することが見られます。
例) putting /ˈpʊtɪŋ/, get it /ˈget ɪt/ …etc.
TOEICのオーストラリア人スピーカーはこうしたflappingを行っているときが多いですが、ときどき普通の/t/で発音していることもあります。
単語の最後に来る/l/を暗い音色のdark /l/という音で発音することはアメリカ英語と共通ですが、オーストラリア英語発音では更にそのdark /l/が母音(もしくは半母音)のように発音されることがあります。
単語の例で言うと、tell, tall, real, well, call…,etc.
変化後の母音類は、[o],[ʊ],[w]あたりになります。
オーストラリア英語発音では特定の子音の後に/j/の音が来た際に子音と融合して音声が変化します。
/t/ + /j/ → /tʃ/
/d/ + /j/ → /dʒ/
それから語頭以外のポジションで以下の融合も起こります。
/s/ + /j/ → /ʃ/
/z/ + /j/ → /ʒ/
アメリカ英語発音では逆に/j/の音がこうした状況で脱落するので(Yod-dropping)、2つの英語発音を比較すると以下のように発音に差が出てきます。
いくつか単語ベースでかなりアメリカ発音と異なるものを挙げておきます。こちらの2つはアメリカ発音とイギリス発音でも大きく差が出る単語の代表例ですね。
scheduleの発音を例文で確かめてみましょう。
I’ll see if I can change my schedule.
次の単語”data”はアメリカ人でも発音の仕方が分かれますが、TOEICのアメリカ人スピーカーは/ˈdeɪtə/で発音していますし、一般的に日本人はアメリカ発音としてはこちらの方が馴染みがあると思います。オーストラリア英語発音では以下の表の右に書いている発音が最もメジャーと言われています。
ここまで個別音にフォーカスしてオーストラリア英語発音の特徴をアメリカ英語発音と比較しながら解説してきましたがいかがでしたでしょうか。アメリカ英語発音はだいぶ聴きとれるがオーストラリア英語発音の訛りに苦戦中という方々に少しでもお役に立てれば幸いです。
こちらはオーストラリア英語発音全てに当てはまるものではありませんが、該当のTOEICリスニングセクションのオーストラリア人スピーカーは特徴的なイントネーションで発音を行っており、これもリスニングを難しくする一つの要素となっています。特徴を簡単にまとめると以下のようになります。
①Yes/No疑問文(通常上昇調)を下降調のイントネーションで発音
②Wh-疑問文(通常下降調)を上昇調のイントネーションで発音
必ず上記のようなイントネーションの発音を行っているわけではないですが、まあまあの頻度で行われるので非常に紛らわしいです。上昇調や下降調などのイントネーションの基礎事項を含めて詳しくはこちらの記事でまとめていますので気になった方はぜひ読んでみてください。
TOEICリスニングパートで発言の理解を促進するイントネーションの基礎
これらのオーストラリア英語発音の特徴をおさえたうえで、TOEICのオーストラリア人スピーカーの英語のリスニングを集中的に行いましょう。聴きながら特徴的な発音はスクリプトに注記するといいでしょう。
さらに多聴としてオーストラリアのニュースなどを幅広く聴くこともお勧めします。私はSpotifyのポッドキャストで以下の番組をよく聴いていてお勧めです。ぜひ毎日のリスニング学習に取り入れてください。
ここまで書いたオーストラリア英語発音をおさえていただければ、基本的にはニュージーランド英語発音にも大方対応できると思います。
その2つは似ているものの、もちろん細かな違いはあるので、気になる方は以下のブログで少し扱っているのでご覧になってください。
TOEICリスニング各国スピーカーの英語発音の特徴のまとめ(アメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダ・ニュージーランド)
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筆者が指導を行っている福岡の3ヵ月短期集中型TOEICコーチングスクールRepの授業ではアメリカ発音をベースとしてその他各国の英語の訛りや個別のTOEICスピーカー毎の発音の傾向などにも触れていき、聴き取りの苦手を解消していきます。また、もちろん英語のリスニング初心者の方に向けては発音の基礎から身につけていただきます。受講生の中には3か月のプログラムを通してTOEICリスニングセクションのスコアを150点以上UP(リーディングセクションを合わせると300点以上UP)された方もいらっしゃいます。
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また、2019年8月1日より既存の「TOEICコース」に加え「英語基礎力トレーニングコース」を開設しその一つとして「英語発音トレーニングコース」を開講いたします。TOEICテストに限らず、幅広い英語使用(主にスピーキング・リスニング)において英語の発音能力は大事な基礎となります。トレーニングを通して正しい英語発音を身につけていきたいとお考えの方はぜひこちらのコース詳細をご覧になってください。
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